こんにちは。金丸弘美です。
今日は「幕末アンパン徳之島に現る!!」のお話。
この1ヶ月で岩手県二戸市、花巻市、それから大分県竹田市、大分市を経て、いったん東京に戻り、再び鹿児島県大崎町、鹿児島テレビの「スロースタイルかごしま」の特別番組のゲストをつとめて、家族のいる奄美・徳之島にたどり着いた。もうずっと旅の空の下だったから、ゆっくり過ごすのはほんとうに久しぶり、といいたいところだが、横浜からの「幕末アンパンプロジェクト」のメンバーと島で合流し、小さなイベントを行うこととなった。
横浜の名物を作ろうと始まった山梨の小麦、徳之島の黒糖、塩、北海道の小豆を結んで、横浜のパン屋さん18軒と連携した「幕末アンパン」は、大ヒットとなって評判となった。そこでプロジェクトメンバーのリーダー櫛澤電機の澤畠光弘さんが、「せっかく話題になったから、徳之島の食材を使って、シリーズを作ろうと」となって、6月6日からパンの職人である加藤晃さん、ケーキの職人木村さちこさんを伴って、徳之島に来てくれることとなった。
プロの人が徳之島まで来て、地域の素材を使って、パンやケーキの指導をしてもらえても、ただ農家を紹介するだけではもったいない。それにパンを焼く場が必要だ。僕の妻・早苗が、思いついたのが鹿児島県立徳之島農業高校の加工施設を使わせてもらい、高校の授業も行い、その準備に地元の農家やパンに興味のある女性人に参加してもらって、すべての工程を女性人と高校生に学んでもらおうというものだった。こうすれば、加工の場を使わせてもらえるばかりでなく、お母さんたちにも地域の素材を持ち寄って、料理の知恵ももらえる、高校生にたちにも授業を通してプロの仕事を直に伝えることができるというわけだ。
6日に徳之島空港に澤畠さん一行を迎えて、伊仙町役場に行って町長に挨拶。それから徳之島農業高校に行って、担当の西山一志先生に会って、打ち合わせと準備をした。そうして農業高校の農場で栽培されている作物を見せてもらった。これは事前にどんな素材があり、どんな育ち方をしているかみてもらうためだ。パッションフルーツ、ドラゴンフルーツ、パイナップル、コーヒー、アテモヤ、パパイヤ、マンゴーなどなどである。ケーキ職人の木村さちこさんは、さすがに果物は詳しいが、ドラゴンフルーツがサボテン科で、サボテンそのままのところに大きな花を咲かせて実がなることは初めて知ったということで、どれもこれもとても興味をもっていただけた。
7日に早朝8:30分に農業高校に集まり、加藤さん、木村さんの指導でパンとケーキ作りが始まった。そこにお手伝いの女性人が数人、さらに素材を持ってきた農家、保健所、役場、他の先生、取材陣も『南日本放送』『南海日日新聞』『大島新聞』と、島の三大新聞が集まって、大賑わいの作業が始まった。パンは、島の黒糖を使ったメロンパン、幕末アンパン、アンパン、コッペパン。ケーキは、黒糖たっぷりのチョコレートケーキ、島の柑橘クヌゲーを入れたチョコレートケーキ、ヨモギ、パッションフルーツ、紫芋、ピーナツ、ドランゴンフルーツなどを使ったさまざまなカップケーキなどが、試作された。
参加した人たちも島の素材の意外な組み合わせに驚きと簡単の声があがる。黒糖をたっぷり使ったメロンパンは、香りがよく、黒糖のもつ植物の緑がほんのり出ることがわかった。パッションフルーツのケーキは香りと甘酸っぱさがあり、色合いが美しい黄色が出たし、ドラゴンフルーツは見事な紅色を出す。ヨモギのケーキは、徳之島の南国の香りが漂うほどで、鮮やかな緑色を放っている。それが加藤さんや木村さんのアドバイスで、次々と素敵なケーキやパンになっていく。みんな食い入るように手伝いながら観ている。試食も大好評であった。
11時からは高校生を迎えて、ふだん授業で行っているコッペパンに加えて、アンパン、メロンパン、幕末アンパンを加藤さんの指導で習った。みんなふだんの授業と違うから、真剣に聞いている。
西山先生もプロの手並みと段取りをしっかり観察している。こうして、パンを焼いてみんなで試食したのである。生徒たちに感想を求めると、みんなこれまでに食べたことないおいしいパンであったという。そうして、授業を終えて僕と西山先生とで、パンを袋詰めをして、3時から学校の外のハウスでパンの直売を行った。学校ではいつも加工授業の後にはパンの販売をするのだそうで、一般の人たちに好評なのだという。
トラックにパンを載せてパンを売った。西山先生の説明が説得力がある。「本日は、横浜からわざわざ先生がお見えになり、徳之島の原材料を使って生徒たちが作ったパンです。これまでのものとは違います。したがって、多くのみなさんに広く味を知っていただくために、本日は、お一人一つとさせていただきます」。これが大人気で、あっというまに売れてしまった。
それから加工所に戻り、全員で試食会。さらに残った素材を使って、いくつかの試作を行った。島の人たちでは、なかなか思いつかない組み合わせが生まれたり、加工の仕方、素材の持ち味など、いろんな側面が見えてきて、デスカッションは、夕方まで続いた。西山先生も、「今までパン焼きでうまく行かなかったところも、疑問点が解決できたし、生徒たちも喜んでいましたから、今回の機会は、とてもよかったですね。またぜひ行いたいですね」と、喜んでもらえた。
ここで試作した素材を今度は横浜に送ってもらい、「幕末アンパンプロジェクト」から、次の新しい商品開発が、改めてスタートすることとなった。
■掲示板
●第5回 それいゆ交流セミナー
『価値観の変革 スローフードを通してビジネスを考える』
◎セミナー&交流会スケジュール
開催日: 6月15日(水)19時から20時30分
※セミナー:90分
講 師: 食環境ジャーナリスト 金丸 弘美氏
会 場: 「女性と仕事の未来館」
東京都港区芝 5-35-3
※JR田町駅三田口(西口)より徒歩3分
地下鉄都営浅草線、三田線三田駅A1出口より徒歩1分
会 費: 3,500円(税込)
※定員40名になり次第、受付終了とさせていただきます。
お問い 合わせ先:「それいゆ」事務局
担当:石川、昌原(まさはら) TEL:03-3779-1261
9時30分〜17時30分(土日祝祭日はお休み)
http://www.e-soleil.biz/seminar/kanemaru/kanemaru.html
http://www.e-soleil.biz/
●2005年6月23日(木) 第3回市民科学講座◆
「食」から見える社会の変え方
・日時:6月23日(木)18:30〜21:15
・場所:文京区茗台生涯学習館 学習室A(文京区春日2-9-5)
(地下鉄丸の内線茗荷谷駅駅から徒歩8分)TEL03(3817)8306
http://www.city.bunkyo.lg.jp/shisetsu/gakusyu/meidai.html
・講師:金丸弘美(食環境ジャーナリスト)
・参加費:1000円
・問い合わせ先:市民科学研究室 Tel&Fax 03-3816-0574 info@csij.org
申し込み手続きは不要です。参加をご希望の方は、直接会場へお越しください。
大量の生産・輸送・消費を前提にした農や食の工業化が様々なひずみを生む中で、今「スローフード」の運動が静かに浸透し始めている。
環境意識の高まりとともに、食の見直しを通して、生物の多様性、世界各地の文化の多様性を尊重する数多くの取り組みが手を携えようとしている。 ほんとに美味しいものをいつも豊かに食べることが皆でできる世界――それを目指す心躍るユニークな“食の変革”の連鎖は、市民の力でよりよい社会を創っていく確かな流れとなるだろう。
全国各地の農村や食の現場で多数の取材を重ねてきた金丸弘美氏を招き、様々な事例を紹介していただきながら、「食」から見える社会変革の姿をとらえてみる。
■好評発売中!!
『ゆらしぃ島のスローライフ』(学習研究社)
金丸弘美著 絵・唐仁原教久
定価:1300円 四六版 176頁
・NHKラジオ『私の本棚』の連続朗読番組になったほか、
新聞、雑誌、ラジオなど90媒体で紹介されました。
本の購入はアマゾンから。
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●金丸弘美正式ホームページ
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●メールマガジン『金丸弘美のスローライフ旅日記』
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●毎週「毎日新聞」デジタルメディアにて食のエッセイ連載中。
http://www.mainichi-msn.co.jp/kurashi/shoku/yurachi/
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・日本ペンクラブ
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・ニッポン東京スローフード協会
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