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  旅日記 no.078
「ぶどうの樹」
2006年2月8日
こんにちわ、金丸弘美です。
福岡県の「ぶどうの樹」を訪ねる

地域の食文化を発信しようと佐賀で始めたネットワーク「オリザ・ジャポニカ・クラブ」の、2006年の最初の会として、先進地視察をおこなった。視察先として選んだのは、福岡県の岡垣にあるレストラン「ぶどうの樹」である。「ぶどうの樹」は、地域の農業と漁業と連携した、個性的な取り組みをしている。

事務局の白濱美保子さんを連れて、昨年、下見に行ったのだが、彼女は、もうすっかりファンになって、その後何度も通ったらしい。「オリザのみんなで、絶対行きましょう。こんな発想、こんなセンスのよさ、学びたいです!!」と熱く語り始め、佐賀と唐津から、バスをチャーターしての、先進地ツアーが実現したのである。参加者は、大学の先生から、農家、栄養士、行政の方、加工業者など、多彩になったのも嬉しかった。
「ぶどうの樹」には、ビニールハウスで作ったぶどうの木の下に作られたレストランがある。なんと15万人が詰めかけているのである。他に旅館や寿司店などがあるが、全体で12億円を売り上げている。レストランは、地域の食材を生かしてメニューはビュッフェ形式で70種類。寿司店は、コンテナなのだが、中は海が一望できて、かつ漁師と連携してのネタは、新鮮で、抜群のうまさである。

場所は、博多と小倉のちょうど間、玄界灘に面した岡垣というところにある。周辺は畑が広がっている。こんなところに、たくさんの人が来ているというのは、実際に見なければわからない。代表は小役丸秀一さん。小役丸さんと知り合ったのは、5年ほど前だが、三重県の「手づくりモクモクファーム」の先進地視察でだった。

山間の「手づくりモクモクファーム」には、毎年50万人が押しかけている。このなかに大人気で地域の食材を使ったぶどうの木の下のレストランがある。ここでは、手作りの結婚式をしている。
面白いなあと思ったら、そのアイディアの元は、福岡県の小役丸さんの「ぶどうの樹」だったのである。

そうして初めて、「ぶどうの樹」に行った。福岡は、九州入るときに必ず福岡空港をつかうので、一年間で10回以上は行くのだ
が、岡垣は、一度も行ったことがない。だが、訪ねてみて、びっくりしたのである。結婚式場が、なんとビニールハウスで作ったというのだが、天井を高くして、白い布を蛇腹状態にして天井に吊るしてあり、床に紅い絨毯が敷いてある。隣がぶどうの樹木の葉とぶどうの下のレストラン。すべて手作りというのだが、とてもそうは思えない。一流ホテルなみの雰囲気なのだ。

この手づくりの結婚式場。結婚する人の意見をきいて、好きな形ですることができる。シャンペンに新郎が、畑でイチゴ摘みをしてイチゴを入れたり、新郎新婦の似顔絵入りのワインがあったり、馬がいて本物の馬で入場したり、もしている。なにより、地域の食材を使った料理が、新鮮で、おいしいのである。年間250組も結婚式を挙げているのだが、うちの従姉妹の二人の子供が、ここで結婚式を挙げた。

レストランでは、地域農家およそ30戸と取引しているのだが、どんな小さな農家の農産物も引き受けて使っているのだ。市場に出せない、高齢者の少量の農産物も車で廻って引き受け、使う。
旬と安全を優先している。メニューを優先せずに、食材を優先し、その代わり料理を工夫をして、一月半に一回メニュー開発をしている。それも毎回農家も参加するのである。農家は料理を学び、料理人は農家の農産物を知るというわけで、交流をすることで、新しい息吹を吹き込んだのだ。

しかも雰囲気がよくて、従業員の接客がとても気持ちがいい。も何度か行っているのだが、とても楽しい。行くたびに発見がある。視察ツアーでは、小役丸さんの話を直接、みんなで聴き、そうして施設をみせてもらった。みんな、新しい地域連携のありかた、農業・漁業を生かした店作りに感心。好評で、改めて行ってみたいという人が多かった。地域活性化のヒントと元気をもらい、これが佐賀でも地域に繋がればと思うのだ。

実は、ツアーメンバーとは現地で別れて、僕だけは「ぶどうの樹」に残った。夜、小役丸さんと従業員の方々も含めて、「寿司屋台」で、寿司や刺身や焼き魚などで、食事と歓談をさせてもらったのだが、お酒も食事も抜群。どれもが旨い。僕は、唐津出身で、魚は好きなのだが、こんなにも美味しい、寿司があったかと思うほど、とても素晴らしかった。スタッフの方々の気持ちのよさもあったのだろうが、しかし、ほんとうに美味しいものを食べたという満足度の高いひと時だったのである。

ぶどうの樹 http://www.budounoki.co.jp/

■新刊のご案内
イタリアでの食のワークショップや、静岡の小学校の「おにぎり」での講座、徳之島での1200名の長寿の食の調査と町を巡るワーキング、全国の学校給食の現場など、自ら参加したものをメインにまとめました。 ぜひご注文いただけると幸いです。

・書名予定  『子どもに伝えたい「本物の食」』
・著  者  金丸弘美
・発売予定  2006年3月10日
・価格予定  1、600円(税別)
・出版版元  NTT出版
・ISBN 4−7571−5056−3
・問合せ先・申し込み  NTT出版 遠藤・今井 
 電話:03−5434−1001
 FAX:03−5434−1005

◎目次
序 章 食と食材の変化は子どもたちの未来を蝕んでいる
第1章 子どもの味覚と個性は10歳までに決まる!
第2章 ファーストフード化が生活習慣病を蔓延させている
第3章 長寿の国・日本が誇る平均寿命は確実に下がる?!
第4章 食べ物がどこから来たのかを子どもと一緒に考えよう
第5章 スローフードの理念を取りいれた食育運動
第6章 味覚の豊かさを育てることは子どもの個性を育てること
第7章 家庭で実践できる食育とは 「体験教室」を活用しよう
第8章 学校はどう食育に取り組むべきか 全国の成功例に学ぶ
終 章 身近なところで食を知ることから始めよう

◎毎日新聞ニュースサイト・エッセイ「ゆらちもうれ」で連載中。
http://www.mainichi-msn.co.jp/kurashi/shoku/yurachi/
◎学校給食を月刊誌「ソトコト」で連載中。
http://www.sotokoto.net/top.html
◎金丸弘美正式ホームページ
http://210.255.173.147/tml/kanamaru/kanamaru10.html
・ライターズネットワークhttp://www.writers-net.com/
・日本ペンクラブhttp://www.japanpen.or.jp/
・ニッポン東京スローフード協会http://www.nt-slowfood.org/