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  旅日記 no.080
「相馬はぜっ子倶楽部」
2006年2月22日
こんにちわ、金丸弘美です
今日は「相馬はぜっ子倶楽部」のお話

福島県相馬市の「相馬はぜっ子倶楽部」というところから講演依頼がきた。この講演は、これまでかなりとは異なる。なにせ前日の午前中に入って、一日町を見て周り、夜会合。翌日は朝7時から市場を見学して、夕方に講演会。それから地元のガイドブックの編集会議という内容なのだ。この間、一切お酒はない。じつに真摯な会なのだ。

かなり密なスケジュールなのだが、実はメンバーに会えることをもっとも楽しみにしていたものなのだ。というのも、普通講演が依頼されると、講演だけというケースが少なくない。それでよしとする人もいるけれども、僕としては、じっくり町をみてみたいと思っているほうなのだ。それが、講演でセットでやってきた。

「相馬はぜっ子倶楽部」は、自主的な市民団体なのだが、相馬の町を自ら発見して、ガイドブックを作るという活動をしている。
代表の新妻香織さんからは、もう早いうちから長い手紙と、ガイドブックのいきさつ、それに台割(雑誌を作るための設計図)までが入っていた。

それによると、相馬市は、商店街はさびれ、パチンコや大型スーパーができ、漁港があるのに地元の魚は生かされず、寿司チェーン店が栄えている、云々など、町の様子が綿々と書かれていた。
寂れる一方の町をなんとか再生したいという思いが描かれていた。

相馬市の海沿い松川浦は、つい最近の平成15、16年度に、自然保護グループが環境省の助成を受けて、「重要湿地松川浦総合調査」を行い、多様でさまざまな生き物の宝庫であることを公にした。また豊富な魚の稚魚を育てる役割をする重要な地域であることを、明らかにした。

新妻さんは「美しい松川浦を21世紀に残す会」を立ち上げた。
そのグループ約50名が、松川浦を中心にその魅力をガイドブックにしようと集まったのだ。それで、町を見ながら、グループのメンバーと町づくりについて考え、講演と編集会議に参加するという趣向なのだ。この組み立て自体が面白い。

2月18日に東京から仙台を経て、相馬に到着した。駅にはメンバーの井上さんや佐々木さんたちが待っていてくれた。地元の料理店での魚をメインとしてのお昼ご飯から始まって、道の駅や、直売所、イチゴのハウスの農家との歓談、ケーキ屋さんなどを巡った。翌日は魚市場、魚屋さん、松川浦などを巡って、講演、編集会議となった。

相馬は、そうとう町並がいじられて、昔の景観が、かなり壊されている。それぞれの店や、活動には素晴らしいものはあるが、全体の連携がとれていない。個々のパーソナルがうまく繋がっていずに、個性が生きていない。その個性を生かして、全体のデザインができれば最高のものになる。実は、この傾向は、僕の故郷唐津とまったく同じ。新妻さんたちが、いたたまれなくなって立ち上がったことがよく理解できる。

それでも彼女たちは、干潟の環境と生物多様性に気がついて、それを全面に出してガイドブックを作るという、きわめていい視点での町の再生を目指している。じつに健全で豊かな方向だといえる。自らが立ち上がり、自分たちの目と足とで、地域のよさを発見するというのは素晴らしいことだ。町起こしの鉄則は、まず地域のよさを再発見することから始まる。それも外部の視点がいかされればなによりだ。そのことを「相馬はぜっ子倶楽部」の人たちはよく理解している。

なにより感心してしまったのは、僕を呼ぶ講演料を捻出するために切符を作り、それを手売りして資金を集めたのだという。まるで、「劇団ふるさときゃらばん」ではないが、切符を販売するところから、講演と町探しを形にしていたのである。そのことで、実にチームワークがいい。町を観て廻るときに、ところどころでお茶やケーキを出してくださったり、さまざまな人に引き合わせてくださったりで、実に気持ちのいい時間をすごさせていただいた。

メンバーの視点がぶれていないことと、じつに意欲的な人たちがいる。これで、新しい地域の活動をよそからも見てきて、自分たちの町に注入すれば、間違いなく、もっとも魅力的な町になるに違いない。ガイドブックの完成が待ち遠しい。

■新刊のご案内

イタリアでのスローフード協会の食のワークショップや、静岡の小学校の「おにぎり」での味覚の講座、徳之島での1200名の長寿の食の調査と町を巡るワーキング、全国の学校給食の現場など、自ら参加したものをメインにまとめました。
 ぜひご注文いただけると幸いです。

・書名予定  『子どもに伝えたい本物の食』
・著  者  金丸弘美
・発売予定  2006年3月10日
・価格予定  1、600円(税別)
・出版版元  NTT出版
・ISBN 4−7571−5056−3
・問合せ先・申し込み NTT出版 遠藤・今井 
 電話:03−5434−1001
 FAX:03−5434−1005

◎毎日新聞ニュースサイト・エッセイ「ゆらちもうれ」で連載中。
http://www.mainichi-msn.co.jp/kurashi/shoku/yurachi/
◎学校給食を月刊誌「ソトコト」で連載中。
http://www.sotokoto.net/top.html

◎金丸弘美正式ホームページ
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