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  旅日記 no.081
『子どもに伝えたい本物の食』
2006年3月1日
こんにちわ、金丸弘美です
今日は『子どもに伝えたい本物の食』について

一年ぶりで本を出すことになった。NTT出版の『子どもに伝えたい本物の食』である。この本の話があったのは、実は2年も前のことだった。「食育をテーマに本を出さないか」といわれて気軽に引き受けたのだが、これがなかなか難しかったのだ。結局、執筆に2年間を要した。

昨年の6月に「食育基本法」ができたが、それ以前、「食生活指針」というのが農水省・文部省・厚生省で生まれたのが平成12年。国の方で「食育」を推進するというのだが、中身をみると、「賢く選んで」とか「健康に注意して」とか、いわばあたりまえのことが書いてある。
裏をかえせば、あたりめのことが、すでに一般では崩壊しているということになる。

いざ、本を書くとなると資料をみればみるほど、どこから手をつけていいかわからない。下手に書くと、国の資料をなぞるだけになってしまう。

おまけに、多くの食育の本をみると、栄養化や栄養バランスのことが中心になっていて、なにを食べているかという、肝心の食材に触れていない。文部科学省の中学生のテキストには、コンビニから上手に選ぶ食育などということまでが書いてある。最近は、マクドナルドを始め、ファストフード会社までが「食育」を言い出す始末で、なにが食育なのだか、わからなくなっている。

そもそも食育の背景は、現在の食のファスト化から来る子供たちを始めとする健康被害に端を発している。アメリカで1970年に発表された「マグガバン報告」で、それにはアメリカ人の突然死が激増しているという問題が出ていて、それは、油脂分や肉類の多い食べ物、野菜の少ない食事事情から、それが健康被害をもたらしているというものだった。そこから、アメリカでは、従来型のアメリカの食改善運動が始まった。そうして穀類や野菜類などの多い食が推進されてきた。
今のアメリカやヨーロッパの日本食ブームは、健康という背景があるのだ。

しかし、日本は1970年から、それまで保護政策をとられたいた食料や食産業の自由化が始まる。ケンタッキーやマクドナルドが一斉に入ってくる。今、よく考えると、アメリカでだめになったものを、日本で市場開拓をしようと目論んだのではないかと思うのだ。その結果、日本は、ファストフードが広がり、輸入農産物がどっと流れこんで、食事情が一変する。農産物は安くなり、農業がなりたたないところが続出する。ファストフードの蔓延は、子供たちのアトピーを始めとする生活習慣病を拡大させた。

日本の「食育」の推進は、食からくる病気の拡大、農業の疲弊、食の現場からの乖離などが背景にある。しかし、要因をたどれば、それは、国と企業が相乗りで、推進したことではないのか? そんなことを考えたときに「食育」のテーマをどう追いかけていこうかと悩んでしまったのだ。

そうして2年間というもの学校給食を食べに行ったり、イタリアのスローフード協会のワークショップを受けにいったり、さまざまな食の講座に参加したり、牧場に通ったりということが始まった。結論は、食
材の背景をきちんと伝え、我々が、それを次世代に渡すことができること、ということだ。

食材の背景とは、その地域でとれた魚や野菜、ということになる。そうしてバランスよい食事。かつ旬の美味しいものということになる。
じつは、この当たり前のことが見えなくなっている。僕の故郷の唐津でも魚の半分以上は輸入である。野菜はF1(一代雑種)で、ニンジンは広陽2号が中心といった具合である。その食材そのものが、どれが地域に根付いたものか、わからなくなっている。

塩もそうだ。ほとんどが精製塩で塩化ナトリウムを使っている。本来の自然の塩ではない。ところが、たいていの食育の本をみると「塩分の取りすぎに注意しましょう」とあって、塩そのものがなにか、塩の味の違いには触れられていない。それは、牛乳や牛といった畜産でも同じ。卵がアメリカで改良された鶏で、卵しか産まない改良種であり、ほとんどがアメリカから輸入された飼料を食べていてそのなかには遺伝仕組換えのものが紛れ込んでいる、なんてことは書いていない。

そもそも国がキャンペーンを張っている以上、鶏の餌や牛の飼育状況までには触れられないいうのが本当のことだろう。そんなことが、本を書き進めるうちに次第にわかってきた。そこで、僕は、現場の事例をできるだけ多く取り入れながら書いた。また食材とその背景という観点から、奄美諸島・徳之島で1200名の食の調査をしたり、伊東の小学校で、実際にご飯と塩を使って、本物背景と味わいというものを伝える授業を行うなど、実践もいくつか試みた。そんなことを書いた僕なりの食育の本になった。

■新刊のご案内
・書  名  『子どもに伝えたい本物の食』
・著  者  金丸弘美
・発売予定  2006年3月9日
・価格予定  1、680円(税込)
・出版版元  NTT出版
・ISBN 4−7571−5056−3
・問合せ先・申し込み NTT出版 遠藤・今井 
 電話:03−5434−1001
 FAX:03−5434−1005

・インターネット書店 Amazon.co.jpから予約ができます。
『子どもに伝えたい本物の食』について、詳しくはこちらをご覧ください。
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4757150563/ref=pe_snp_563

『子どもに伝えたい本物の食』◎目次

序 章 食と食材の変化は子どもたちの未来をむしばんでいる

 素晴らしい食材との出会い 9
 自然発生的に広がった「スローフード」活動 13
 外食産業隆盛でネズミが大発生! 16
 現代は子どもの半分がアトピー性皮膚炎 20
 なぜアレルギーが蔓延したのか 22
 アトピーに占める食の要因は侮れない 25
 自分と家族にも迫っていた健康の危機 29
 食のジャーナリスト?としての原点 32

第1章 子どもの味覚と個性は一〇歳までに決まる!

 「きてきて先生」の講師に招かれて 37
 精製塩は「ただ塩っ辛いだけ」 42
 素材の種類によって味は千差万別 45
 松井秀喜選手も食べているお米 48
 驚くような表現力を持つ子どもたち 51
 味覚教育は一〇歳までが勝負 54

第2章 ファストフード化が生活習慣病を蔓延させている

 「食育」とは食の文化を知ること 59
 政府の食育への取り組みの背景 64
 「マクガバン報告」が与えた影響 67
 マクドナルドで食べ続けると… 70
 『デブの帝国』の衝撃的な内容 74
 日本に潜む?デブ予備軍 78
 楽しくおいしい食を取りもどそう 81

第3章 長寿の国・日本が誇る平均寿命は確実に下がる?!

 徳之島の長寿・町おこし計画 87
 沖縄県大宜味村の先進的な試み 89
 大成功に終わった長寿シンポジウム 92
 長寿調査で浮かび上がった実態 96
 野菜の摂取量に格段の違い 99
 若年層に蔓延しつつある生活習慣病 101

第4章 食べ物がどこからきたのかを子どもと一緒に考えよう

 日本の自給率は世界で最低レベル 105
 田んぼから生き物がいなくなった 109
 鳥インフルエンザが拡大感染した理由 113
 BSE騒ぎで露呈した肉骨粉問題 116
 あまりに無頓着な消費者たち 118
 日本にしかない「高温殺菌牛乳」 121
 森永砒素粉ミルク事件と雪印食中毒事件 124
 生産の現場を知ることが真の食育 126

第5章 スローフードの理念を取りいれた食育運動

 言葉がひとり歩きしている「スローフード」 129
 本場イタリアで行われている多彩な活動 132     
 スローフードVSファーストフード 136
 有機野菜は高いのか安いのか 139
 エビの養殖が環境破壊を招いている 143 
 「食のコミュニケーション」の大切さ 147
 五感をフル動員するユニークな教育法 151
 日本の食育はスローフードに反する?! 153

第6章 味覚の豊かさを育てることは子どもの個性を育てること

 食育の現場 フランスの個性的な教育法 157
 ニッポン東京スローフード協会の試み 159
 アイガモ農法こそスローフードの実践 164
 鶏を一羽丸ごとおろす親子料理教室 168
 子どもたちに本物の食材を伝えたい 171

第7章 家庭で実践できる食育とは 「体験教室」を活用しよう

 都内で増えている体験農園 177
 牧場で開催する体験教室 180
 ウィンナー作りの体験工房 183
 子どもが「泥んこ体験」できるファーム 186
 ブドウ園の中にあるレストラン 187

第8章 学校はどう食育に取り組むべきか 全国の成功例に学ぶ

 給食に旬の素材を取りいれる 193
 ○埼玉県・上芝東小学校 個性を育む食育を実践 196
 ○東京都日野市 市と学校が地元農家と連携 198
 ○東京都・柳田小学校 給食を楽しむための配慮 200
 ○千葉県・行徳小学校 親の協力で海苔すき体験 203
 ○長野県・奈川小学校 田んぼ観察からもち米作りまで 205
 ○佐賀県七山村 地元の食材一〇〇% 207
 ○熊本県・馬見原小学校 野菜からお茶まで自主栽培 210
 ○沖縄県名護市 沖縄の行事に合わせた伝統料理を 211
 学校給食の大切さを今一度考えよう 211

終 章 身近なところで食を知ることから始めよう

 家庭で実践したい食育一〇カ条 213
 地域で取り組みたい食育四カ条 220

 あとがき 223
 参考文献

◎毎日新聞ニュースサイト・エッセイ「ゆらちもうれ」で連載中。
http://www.mainichi-msn.co.jp/kurashi/shoku/yurachi/
◎学校給食を月刊誌「ソトコト」で連載中。
http://www.sotokoto.net/top.html

◎金丸弘美正式ホームページ
http://210.255.173.147/tml/kanamaru/kanamaru10.html
・ライターズネットワークhttp://www.writers-net.com/
・日本ペンクラブhttp://www.japanpen.or.jp/
・ニッポン東京スローフード協会http://www.nt-slowfood.org/