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  旅日記 no.099
「トマト」
2006年7月6日
こんにちわ、金丸弘美です。
今日は「トマト」のお話

 テレビ東京の番組「トコトンハテナ」のゲストに呼ばれた。俳優の高橋英樹さんがメインで、素朴で身近なテーマを追いかける30分番組。今回のテーマは「トマト」。ともかく高橋英樹さんと直に会えるというだけで嬉しくて番組に喜んで出た。

スタジオで会った高橋英樹さんは、すごく格好いい。すでに60代のはずだが、どうみても50代前半という感じ。若々しい。さすがに人気の俳優さんだけに、しっかり自己管理をしていらっしゃるようで、背筋もぴしっとしていらして、しばし、見惚れてい
た。

番組では、高橋英樹さんが、昔食べた、夏場のトマトはどこに行ったのかというものを探すという話。小さい頃、高橋さんが夏場にがぶりと食べたトマトは、肉厚で、種がおおくて、青いところもあって、香りが強く、すごく美味しかった。それが、今は見当たらない。いったい、どこにあるのか、というものだ。レポーター役の二人の女性コンビが、あちこちにトマトを訪ねていくというものだ。

トマトは現在120種類は出回っているという。日本とヨーロッパではトマトの系統が違う。イタリアでは、加工食用の赤色系と呼ばれる、色合いが強く、酸味があるものが主流である。日本では、アメリカで改良された桃井系という生食用のものが主流である。

トマトの入ったのは江戸時代。オランダからもたらされたのでは、といわれている。観賞用としてだった。実際に食べるようになったのは、明治から。一般化するのは昭和に入ってで、それも戦後のことである。この間、品種や改良が行われてきた。現在出回っているのは、桃太郎系のF1(一代雑種)が主流で、ほぼ80%を占める。

桃太郎は、偶然にも高橋英樹さんの代表作「桃太郎侍」と同じ名前だ。桃太郎が登場するのは昭和58年からである。完熟系とも呼ばれるもので、色づきがよくて、身がしまっていて、日持ちがするということから、桃太郎が流通の主流になってしまった。私たちがスーパーの店頭でみかけるトマトのほとんどは「桃太郎」である。

スタジオでVTRを観ていると、レポーターが訪ねるスーパーや農家の人たちも「桃太郎」以外のトマトのことはわからない。つまりは、桃太郎で育ち、桃太郎を食べているから、トマト=桃太郎というふうにほとんどの人が思い込んでいるのがわかる。

僕や高橋さんが食べていたいトマトは、実は、種も品種も違う。果たして高橋さんが食べていた千葉の品種と、僕が食べていたい佐賀県の唐津市のトマトの品種が、同じものかはわからない。
まったく違う種だったかもしれない。しかも当時は、ほとんどが露地栽培で、夏場しか出回っていなかった。だから、いつも食べるものでもなかった。それだけに印象も強く残っているのだろう。
現在は、ハウス栽培が発達していて、通年で出回っている。しかもF1で、甘い方向に改良されている。だから、個性にかける。
食は、さまざまに五感を使って食べるから、現在のトマトと、高橋さんが食べたトマトでは、種はもちろんのこと、栽培の方法、季節感、香り、食べた感触もふくめて、まったく異なるのである。
つまり高橋さんのトマトを探そうと思えば、種から見つけなければならない。

現在でまわっている大根、ニンジン、カブ、キュウリなどは、大型の流通にむけて改良されたF1が主流。大量生産と大量消費に向いたもの。形状や色をよく、箱詰めや流通に向き、日持ちのするものへと拍車がかかり、画一化されたものとなった。そればかりか、中国でも作られ、それが日本に持ち込まれ、野菜の低価格化や農業の衰退も招いている。また種が大手資本に寡占化され、農家はつねに種を購入しなければならない。

日本の種の自給率は28%、野菜によっては10%しかないものあるという。一代雑種と呼ばれる種は、大手の種メーカーから購入して栽培されている。この種から生まれた野菜は、同じものしかできない。一代限りなのである。そのほとんどをアメリカがにぎっているといわれる。

最近「にっぽんたねとりくらぶ」(現代書館)という本が出た。これは兵庫県の本野一郎さん、小林保さんという農業の技術の専門家を中心に、地域に伝わった種を自分達で採取し、それを広げて、伝統的な地域の種を守る活動をしている人たちが、まとめた種のガイドブック。各地の種の入手先から栽培方法まで、写真入で詳細に紹介されている。必見の本である。

■テレビ東京「トコトンハテナ」。テーマは「トマト」です。
今回は、昔懐かしいトマトは、どこへ、というものです。
放映は、7月16日(日曜日)18:30〜19:00です。
http://www.tv-tokyo.co.jp/tokoton/

テレビ東京のほか、テレビ愛知、テレビ北海道、テレビ九州、
テレビ瀬戸内、テレビ大阪で、同時間で放映されます。

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