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  旅日記 no.165
「石巻の漁港と生物多様性と農業」
2007年11月21日

こんにちわ。金丸です。
今日は「石巻の漁港と生物多様性と農業」の話です。

時事通信「内外情勢調査会」という全国ネットワークがあり、そこに呼ばれて各地で講演をしている。テーマは「食からの地域再生」。新しい各地の活動を伝えるのが役割だ。おかげで北海道から鹿児島まで訪ねた。

11月16日には石巻。宮城は仙台や田尻など何度も行っているが、石巻は初めて。講演翌日、石巻魚市場に行った。市場の須能邦雄さんの案内で朝6時から視察させていただいた。石巻魚市場は漁獲量は12万8000トン。売り上げ203億円。全国で3位。

サバ、イカ、タラ、シャケ、タコなどがたくさんあがっていた。活況があるように見えるが、状況は、各地と同じだった。温暖化や環境の変化で漁獲量が下がっているという。また高齢化している。深刻なのは、原油の高騰である。船舶を動かすにも原油があがり、どの船も操業を苦しめているという。

加工では中国やロシアなど、かつて輸入していた冷凍すり身が入らなくなっているという。これは中国やヨーロッパ、アメリカなどでも魚の需要が増えているためである。価格も高騰している。そのしわよせは、加工業者に行っている。

また魚の販売先は、全国的にスーパーが寡占化しているために、値段が上がらない。地域の商店街も道路の拡幅とスーパーや大型店の進出で、シャッター通りとなっている。かつてのような地域の商店や魚店との連携が途切れてしまっている。

ここ1年間で、相馬、境港、平戸、佐伯、唐津と漁港を巡ったが、状況はどこでも同じである。こうなると地域が連携を行い、新たな食での結びつきと同時に、地域そのもののあり方を全体で考えていかないと、今後、存続自体が難しくなるだろう。須藤さんから、魚の現況と市場の仕組みをおそわり、8時に、マグロとクジラの刺身で朝食。さらに手作りの笹かまぼこをいただいた。

石巻から直行で東京大学農学部にある弥生講堂のシンポジウム「生物多様性と農業」に出かけた。これは、千葉県佐原市で始まり、宮城県田尻町で大きく発展し、さらに兵庫県豊岡市でコウノトリを戻すこととなった冬場に水を張る、「冬期湛水水田(とうきたんすいすいでん)」の現況の報告である。パネラーの宮城県田尻で活動している「日本雁を保護する会」の呉地正行さんや民間稲作研究所の稲葉光国さん、コウノトリを戻す環境作りを行政で進めている中貝宗治豊岡市長と再会。

呉地さんたちの活動は、もう10年近く、ずっと注目しているのだが、徐々に広がっている。農業技術的にも、かなりレベルが上がっている。豊岡市での行政レベルでの取り組みが始まったことで、大きな社会認知に広がっている。これに行政政策として、EUなみの直接支払いなどの制度の組み込みがあれば、さらに広がるだろう。

11月19日、文化放送「世相ホットライン ハイ!竹村健一です」にゲスト出演で収録。岩波書店の新刊「創造的な食育ワークショップ」で呼んでいただいた。食育の背景を話していたのだが、農業再生のことから、前日、東大で聞いた「生物多様性と農業」を踏まえて、豊岡市でコウノトリが戻ることで、米が相場の3倍で売れ、観光客が46万人になったこと コウノトリを戻す田んぼに補助金が出ていることなど、新しい地域の取り組みを話した。

また民主党が推進した農家の直接支払いがEUの制度からきていること、イタリアでのスローフードの食の戦略の背景が、EUの農業政策があることなどを話した。竹村さんが「なるほど、コウノトリが戻れば、米の付加価値も上がる。安心安全もわかる。各地に事例がいくつもあるんだなあ。君の本、改めて読んでみる。あちこちで紹介するよ」と言ってくださった。熱い25分間の収録となった。

このなかで竹村さんが「マスコミも食品の偽装問題ばかりおっかけてないで、地域の新しい取り組みを紹介しないとだめだよ」と言う話には、僕の考えとまったく一致して、とても嬉しく楽しい時間となった。

■平戸市で食のワークショップ開催
平戸市観光商工課http://www.city.hirado.nagasaki.jp/sight/
○N学び舎で「食育」
日時 11月25日(日) 11:30〜13:30
場所:根獅子小学校体育館(平戸市根獅子町181)
参加費 200円/小人 500円/大人【60名】"

"周りは棚田に囲まれ、その先には美しい海が広がる平戸市立根獅子小学校。平戸市内の美しい棚田で作られる平戸棚田米3品種(コシヒカリ、ヒノヒカリ、あさひの夢)をおにぎりにして食べ比べます。根獅子の海から作られた天然塩で握ってみましょう。付合せに平戸の天然塩で漬けた漬物もいただけます。
地元の棚田米と地元の塩の相性をお楽しみください!"

◎申し込み先
※申込は先着順。定員になり次第締め切り。
天候等により会場を変更する場合にはあらかじめ連絡いいたします。
"平戸・松浦地区観光人材育成協議会平戸事務局
(平戸市観光商工課内)
【電 話】0950-22-4111(内線2276)
【 FAX 】0950-22-3399
【メール】氏名・住所・電話番号・職業を明記のうえ
kankou_jinzai@city.hirado.lg.jp まで
※交通アクセスは下記URLにて確認してください。
 http://www.city.hirado.nagasaki.jp/jinzai/"

■最新刊のご案内。
『創造的な食育ワークショップ』金丸弘美著(岩波書店)。
定価1800円。8月30日発売。表紙:峰岸達
購入: 岩波書店 http://www.iwanami.co.jp/
       アマゾン http://www.amazon.co.jp/

東京・八王子:磯沼ミルクファーム牧場の料理会、埼玉:ファームINさぎ山農家の料理会、大分県竹田市:サフランのパエリア、大分県佐伯市:親子ふれあい教室のおにぎり、佐賀県唐津市の漁港でのブイヤベースなど19本の事例が大々的に登場します。

テーマは食育ですが、地域の活性化とブランド作りにつながる形としてまとめ、すべて実践に基づいて書いています。

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