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  旅日記 no.188
「サンワ工務店 山野潤一さん」
2008年5月7日
こんにちわ。金丸です。
今日は「サンワ工務店 山野潤一さん」の話です。

NHK教育の「ビジネス未来人 古い建物を生かす達人 サンワ工務店社長 山野潤一」(2006.05.12)放映をたまたま観て、すっかり魅せられてしまった。いつかこの人に会いたいと、ノートにメモをした。

山野潤一さんは、熊本市上通というアーケードのメイン通りの裏手の上乃裏通りを中心に古い家を店舗に改装して、若い人たちの店作りをしているという内容だった。店は、古い家屋を改装して、天井を取り外し、梁をむき出しにして、そこに大きな扇風機をつけた、ちょっとレトロっぽい美容室。あるいは、天井に工事用のライトを配し、店の中央にタイル張りの水道つきの水場があるお花屋さんといった具合だ。

それもあまり開業資金のない若手の人に、工務店の敷地に集めた、さまざまな古い家具や道具やガラスや電球やと、ありとあらゆるものを使って、できるだけお金をかけないで、オリジナルな店舗を作るというものだった。その古い道具たちを、若い人たちに、自由に持っていかせる。その道具たちが見事生き返る。

テレビを見た、その後、2006年8月に、農家から講演会を頼まれて、熊本に伺う機会があり、頼んで、上乃裏通りに連れて行ってもらい、街並をちょいと見学をした。そして、テレビで登場したお花屋さんに飛び込んで、店を拝見させていただいた。これが、すべて手作り。古い道具や家具が見事に調和している。しかも古い町並みに、すっかり溶け込んでいるのだ。デザインが素晴らしい。

そしていつか山野さんと会いたいと思い、この連休前に、直接、連絡を取り、妻・早苗と出かけることとした。ところが、そのときに街づくりのメーリングリストを見ていたら、大分県竹田市の和菓子屋さんで但馬屋老舗の板井良助さんが、上乃裏通りの中心的存在に、蔵を移築して店にした草野龍二さんという人がいると、流れていた。その店も山野さんが手がけたらしいのだが、草野さんこそ、会うべき人みたいなことが書かれている。

そこで草野さんの連絡先を板井さんに教えていただき電話を入れたところ、取材なんてとんでもない。もう、息子たちに店を任していることだし、街づくりなんて、そんなたいそうなことはしていないので、と丁寧に断われた。それで、草野さんと会うことは、とりあえず保留として、サンワ工務店山野さんに連絡したところ、時間を作ってくださることとなった。

熊本に早く入り、その場で、草野さんに直接電話を入れた。「ここまで来ましたので、お会いするだけで結構ですから」と言うと、草野さんは、わざわざホテルまで来てくださった。そして、噂の蔵を移築した「レストラン壱乃倉庫」を案内していただいた。もう人に貸しているとのことだったが、重厚な建築物を活かしたレストランは、実に素晴らしかった。http://www.ichinosouko.jp/

草野さんは、ただ蔵が好き、惚れて、長い歴史をもった柱を見ると抱きつきたくなるとのことだった。そして夢をかなえたとのこと。実に素敵な、純粋な人で、すっかり打ち解けた。そして、その日あった熊本大学の先生や生徒、私が会う予定になっていた「熊本日日新聞」の記者も呼んで、一緒に飲むことになって、すっかりなごんでしまった。実は、草野さんは、とても照れ屋の方だとわかった。

翌日、山野さんの工務店に伺った。街のはずれにあった。山野さんは、髪が短く、Tシャツで、気さくな人。草野さんが、蔵に惚れて惚れて、その店を移築したいと、実際やってみると、建築法があって、難しかったらしい。その移築の方法を伝授したのが、山野さんのお父さんだったらしい。そこで草野さんは恩義を感じて、頼んだ工務店を丁重に断り、山野さんに店を依頼したのが、つきあいの始まりだという。

山野さんが手がけた店は、熊本市内だけでも100軒近くあるという。大正時代のレンガ作りの銀行を活かした店舗。新しい店ながら、すべて古い家具やいらなくなったシャンデリアやケースを使ったブティック。古い旅館にブティィクや料理店を組み込んだモダンな店。漆喰を使ったケーキ屋さんなど、どれも魅力的な店ばかり。しかも街並に調和している。

全部見るには、とても時間が足りない。今度、また行くとにしよう。
そう思うほどの素敵な出会いだった。

金丸弘美(食環境ジャーナリスト・食総合プロデューサー)
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