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  旅日記 no.177
「偽装問題と中国ギョーザ」
2008年2月13日
こんにちわ。金丸です。
今日は「偽装問題と中国ギョーザ」の話です。

ミートホープ偽装問題から今回の中国ギョーザ事件と、食の安全をめぐる報道があいついでいるが、そのことで、このところ僕のところにも毎週のように雑誌や新聞などのインタビューの話が舞い込むこととなった。

一連の食の事件の問題の本質は、ほとんど同じだと思っている。日本の食の流通の産業構造のゆがみが、反映されている。今、全国に行くとわかるが、全国の町の郊外で、スーパーや量販店が進出している。そして、価格競争になっている。コープの店舗も大型化し、価格競争に巻き込まれている。

コープの店舗事業は8割は赤字といわれている。そのことから、事業連合をつくり、仕入れを一本化し、コストを削減している。仕入れを一本化すると、どうなるのか。ナショナルブランドの商品が、スーパーと6割は同じということとなる。

そして、コープとスーパーが地方では価格競争をしている。その皺寄せは、農業、漁業、加工業者へと行く。加工品も一円でも安いものが求められる。となると、業者は価格を安くするために材料を輸入や、冷凍や、添加物やなど、さまざまに安くせざる得ない。当然ながらミートホープのような業者が出てもおかしくないわけだ。

実際、練り物業者に話を聴いたら、相手のスーパーが一円下がったから、一円下げてくれとなる、という。そうなると、水を多く入れたり、中国の安い材料をとなると、という話だった。対応ができなくて廃業する加工業者も多いという。

そこでさらに安いという中国への丸投げということとなる。今回の中国の工場の売り上げ、労働者数を調べた知人によると、労働賃金は、一月1万円から1万5000円くらいしかならないという。つまりは、原価が安く、材料が廉価で、労働賃金が安いところへと、流れている構造となっている。この結果、私たち日本の地方はどうなっているのか。

価格決定権のない農業者や加工業では価格を低く抑えられる。また地域の商店街は大型店やスーパーに客を奪われ、道路拡幅で、商店街も閑古鳥が鳴くという構造になっている。スーパーも競合して閉鎖するところも多い。こうなると地域の地盤低下を起こしている。

コープに出荷している、ある農業団体の代表は「たしかにかつてはコープ出荷で支えられてきた。しかし、こんな状況じゃ、俺たち生産農家に未来はない。俺たちは、スーパーもコープも他にも出す。勝手に価格競争をしてつぶしあってくれと、言いたい。残った方に出す。そして自分たちでも市場も作って、自分たちで直接消費者に売ることにもした」との話だった。

またある生産者代表は「困ったものです。コープもなんとかしてくれなきゃ。でも自業自得だね」との話だった。大型化し、価格競争に巻き込まれたスーパーやコープの展開に見放すような話も出ている。

今、地方では、自ら生産団体を組織して、市場やレストランや加工場を作り、自ら販売を行う農業団体が増えてきた。そちらのほうに、消費者が集まり始めている。今回の中国ギョーザは、これまでの大量生産販売、そして食の下請け化という、これまでの流通のひずみを象徴している事件だと思う。

金丸弘美(食環境ジャーナリスト・食総合プロデューサー)
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