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  旅日記 no.181
「平戸市の島めぐりの料理会」
2008年3月12日
こんにちわ。金丸です。
今日は、「平戸市の島めぐりの料理会」の話です。

 長崎県平戸市の地域づくりにかかわって2年目になる。最初は講師としてうかがい、2年目の2007年からは、食のワークショップを展開することとなった。全6回、地域の景観、料理、漁師、農業、行政を横断する形で、おこなってきた。3月7日が最終回。

 自分でももっとも楽しみにしていたもので、島全体を使っての食を披露しようというもの。舞台となったのは、平戸からフェリーで40分かけて行く「的山(まとば)大島」。島の名前がよくわからなかったのだが、今回、地元の方から「昔、流鏑馬(やぶさめ)をしていて、その的があったことからついた」と教わった。

 棚田があり漁港があり江戸の町並みがある。それを全部連携させてワークショップを展開しようと提案した。棚田を巡り解説をしてもらい、江戸の町並みもきちんと話してもらう。そして、捕れたての魚でお母さんたちにすり身にしてもらって目の前で天ぷらにしてもらう。さらに天然の鯛で、棚田の米で鯛茶漬けという趣向だ。

 参加者はおよそ20名。早朝のフェリーで島に渡り、バスで棚田をめぐるところから始まった。的山大島は、人口1500名の島で、半農半漁。島は、頂上付近まで、丹念に耕して棚田になっている。よくぞここまでというほどに、うねうねとなだらかな、小さな道が続き、小さな田んぼが、島の山並みにそって、小さく、連なっている。

 棚田は、一つ一つが小さく、形が全部違う。棚田の石積みもどうやっているのか。田植えはどうしているのか。稲刈りはどうするのか。そう疑問に思うほどに、よくぞ、田んぼができたものだと、感心する。それが現役で今も使われているのである。

 港のそばの住宅街は、小さな平地に、町並みが形成されている。道路幅も狭い。そこに地形に合わせて住宅が連なっている。江戸期に捕鯨が盛んで、その当時にできたという。外見は、多少変わっている家もあるのだが、かつての家がそのままに使われている。今回は、町並みを解説してもらって、特別に2軒の家に実際中に入って見学させていただいた。

 家は江戸期からのそのままのつくりで、下は土間になっている。天井は梁がおおきく、家具は作りつけになっている。外からではまったくわからない。重厚なたたずまいで、なんだかずいぶんと違う世界にやってきたと思わせた。参加者の人からも「解説や家の見学がなかったら、ただ通りすぎるだけで、なんにもわからなかったね。それにしてもすごい」と感心する声がしきり。熱心に写真を撮る人も多かった。

 棚田、町並み見学を終えて、地元の民族館の前の広場に行くと、天気もすっかり晴れて、とても気持ちのいい春の風が流れるようになった。広場には、テーブルに白いクロスがおかれ、菜の葉が飾られている。地元のお母さんたちが、目の前で、トビウオとアジで練ったすり身で天ぷらをあげる。炊きたての棚田のご飯で、漬け込んだ鯛を使って鯛茶漬けを出してもらった。最高の昼食会。

 お母さんたちにもインタビューをし、全員を紹介したら、大きな拍手が起こった。今回も、平戸市の観光商工課、農林課も連携して、地域の歴史的背景や食材のテキストを作り、現場で解説をしてもらったのだが、これも好評。飾りつけも抜群で、とても素敵なワークショップとなった。ギリシャで島を巡って村を開放しての料理会に昨年参加したのだが、そのギリシャにような、とても面白い演出となった。

 来年度は、これらのワークショップを大々的に観光と連携する形で、売り出していきたいと思っている。

金丸弘美(食環境ジャーナリスト・食総合プロデューサー)
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