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  旅日記 no.198
「安心院のツーリズム」
2008年7月17日
こんにちわ。金丸です。
今日は「安心院のツーリズム」の話です。

 7月11日から13日まで、大分県宇佐市安心院に行ってきた。安心院は農家を使った宿泊で、グリーンツーリズムの先進地として知られていて、前からどんな取り組みがされているのか、ずっと気になっていたところだ。

コーディネートを、竹田市の読売新聞支局で記者をしている堀米千恵子さんに頼んだ。彼女は大分の食育ネットのメンバーで、大分の竹田市の事業では、毎月のように会っていた。大分各地の素敵な取り組みをよく知っている。それで、お願いをしたのである。

空港まで迎えにきてくださったのは、時枝仁子さん。彼女の家には、前回一度伺っていたのだが、100年ほど前の農家を改築をして、宿泊を受け入れている。そのたたずまいの素晴らしさに驚いた。一般のお客さんも泊めているという。

安心院は、現在、合併で宇佐市となった。それまでは人口7000名ほどの、山々に囲まれた盆地である。養蚕がさかんだったところだ。この地で、グリーンツーリズムを始めたのは、葡萄農家の宮田静一さんである。

宮田さんによると最初は、役場からやってみないかと言われて、なんとなく始めたが、そのうち立ち消えになったという。その後、参加したメンバーで積み立てをして、ドイツに研修に行き、本格的に取り組みたいと思ったという。

「ドイツに行って、農村にゴミ一つ落ちていず、農村景観が美しいのに圧倒されました。これは絶対にやるべきと思いました」という。安心院の農家や兼業農家50軒が宿泊を受け入れている。宿泊客が料理を作ることに参加することで、旅館や民宿のように旅館業でなくても宿泊ができるように法緩和がされたことで、可能となった。

運営は、NPOが行っている。年間の受け入れは、5000名ほど。驚いたのは、この日の受け入れは、韓国の子供たちの体験学習。翌日は、中国の子供たちだったことだ。大分県の担当の方と話したら、中国の無錫、宜興、江陰と交流をしていて、文化理解のために受け入れを始めたのだという。もう日本の山村で、国際交流が始まっていることに驚いた。

宿泊は一日目が中山さん、二日目が矢野さんと、お二人とも、かつて学校の先生をしていた方で、宮田さんの活動を立ち上がりから、応援をしてきた人。手料理がでて、とても素晴らしい。

なかでも感心したのは、参加の農家同志での、毎年、年5回の勉強会が行われていて、それが、それぞれの農家の体験の技術向上になっているばかりか、大きなコミュニケーションの場になっていることだ。

矢野さんのところでは、地元の大豆を使った豆腐づくりが行われた。農家の主婦の人たちが集まって、矢野さんに手作り豆腐の作り方を学ぶ。そして豆腐を中心に昼食となったのだが、その品数の多さにびっくり。それも地元の農産物を使ったものばかりだから、美味しさはこのうえない。

参加者のなかで山奥の農家に嫁いだという江藤憲子さんの言葉が印象的だった。

「19歳のときになにもわからずにとついで来ました。毎日働いて、子育てをして、家からもでることができなかった。姑さんは、うちで子育てして働いてさえすれば、期限がよかった。なんでこんな田舎にきたのだろうと、嫌で嫌で仕方なかった。娘からも、なんでこんな田舎に嫁に来たのといわれていた。

ところがグリーンツーリズムを始めて、よその子供たちが、私たちの田舎の風景や森や暮らしを素晴らしいと褒めてくれる。嫌だった田舎が素敵なところだと、気付かされた。それで、自分たちの宝を発見した。それに、みんなと知り合いになり、勉強会でも、楽しみ。もう生きがいになりましたね。ほんとによかった」

彼女の笑顔が素敵だった。この日、彼女は中国からの子供たち7人を迎え入れた。

矢野さんの豆腐研修会には、堀米さんも来てくれて、午後からの勉強会の川遊びを取材して、昭和の町で話題となった豊後高田の商店街を一巡りしてから東京にもどった。そのあと、奄美へ。そこからさらに長野県諏訪、松本、茨城県常陸太田市、北九州、徳島県上勝町へと、今月は旅が続く。

金丸弘美(食環境ジャーナリスト・食総合プロデューサー)
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