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  旅日記 no.217
「スローフードの地イタリアの旅」
2008年11月21日
「スローフードの地イタリアの旅」こんにちわ。金丸です。
今日は「スローフードの地イタリアの旅」の話です。

イタリア・ピエモンテ州のブラとトリノを訪ねた。4年ぶり4回目のイタリア訪問である。今回の目的ははっきりしていて、ひとつは前に建築中であったスローフード大学を観ること。それにトリノに誕生したスローフード協会がコンサルタントをしたスーパーマーケット「イータリー」を観ること。そして、ブラの市役所を訪ねて、そもそもスローフードが生まれた町づくりそのものの考えを観てくることにあった。

というのも、この4年間、全国を巡っていて、食のアドバイザーを頼まれることが増えたのだが、そのとき行き当たるのが、食の背景にある流通や農業政策、町づくりそのものの課題だ。今、スローフードは、食のことだけだはなく、持続可能な社会をどう生み出すかという運動に踏み込んでいる。またヨーロッパ全体が、新しい農業施策のなかで、次々と政策提案型のものを地方に求めている。

そしてブランド化やツーリズム、有機農業の推進など、さまざまな具体的な形が誕生している。そういった流れのなかにスローフードもある。だからあらためて食をテーマに、全体の流れをみてみたいと思ったのだ。

今回の旅にあたって、スローフードの大学を出てトリノ在住の中野美季さんにコーディネートと通訳をお願いした。そんな矢先に、トリノの「イータリー」が東京・代官山に進出。その店舗のマネジメントを担当するやはりスローフード大学を出た岡崎啓子さんが来日していることがわかり、お二人にコーディネートをお願いした。
(『EATALY代官山』http://www.eataly.co.jp/manifesto.html

おかげで、こちらのリクエストにこまかく対応してくださった。参加者を募集したのだが、あいにくほとんどの人が日程があわなかったことと、当初の予定では、かなり遠征することになっていたこと、料金的なこともあって、参加は、結局は、我が家の夫婦と、TBSのキャスターのたなかゆうすけさん夫妻の4人旅行となった。

これが結果的によかった。夫婦同士なので、へんなきをまわすこともない。タクシーも一台ですむ。それにたなかさん自身が、とてもスローフードに興味をもっていて、積極的な人なので、こちらも取材をかねているからやりやすいというのがあった。

しかも岡崎さんと中野さんが現地とこまやかなやりとりをしてくださって、ちょっと普通ではいけないような段取りを組んでくださったので、旅行は最上のものとなった。

宿泊は2泊づつで3箇所。最初はワイナリーをもつブラの中心部のモダンなデザインのホテル。そのあとは、スローフード大学のホテル。最後はトリノと、宿泊も存分に楽しめた。

まずブラに着いてバローロの州政府が支援する城を使ったワイナリーを見学。これは小さな農家の登録制になっているのだそうで、バローロ地区の生産地図や土壌条件や品種、熟成などが明確にしてあり試飲もできる。はっきり履歴がわかり、またパーソナルも見える、とても面白い。

大学ではレストラン「GUID」で食事。それと大学地階のワインバンクを見学させてもらったが、ともかくスケールが素晴らしい。なにせ、かつての城がそのまま大学になっている。優雅すぎる。理事のジャコモ・モヨーリさんとも再会。とても喜ばれた。彼いわく「全世界から人がくるのだから、宿泊も料理も一流でなければ」という。いやたまげた。彼の言葉でもっとも心に響いたのは「食のクオリティを考えることは人生のクオリティを考えることだ」。

ほかにもワイナリーと州政府の農家支援事業、ツーリズム、スローフード協会国際本部、ブラ市役所、アルバのトリフ祭りなど、スローフードのリンクしている市の町づくりや、ワインやチーズなど農家の加工販売など、全体の流れを見る形で、さまざまな人たちをインタビューした。

さらにブラやトリノでの商店街を遮断して歩けるようにした商店街の取り組み、農家の野菜市場、地域農産物を使った学校給食、小学校の畑を使った授業、1600年代の歴史的建造物をそのまま使ったトリノ市役所の内部と議会室など、ふつうはのぞけないところまで見学できた。役場が歴史資産で、かつ会議室は中世のままなのには驚きだった。おまけに警備員さんに役場のバッチまでもらった。

トリノではスローフード協会がコンサルティングをしたスーパーマーケット「イータリー」も観てきた。内部の様子や仕組み、集められた食品など、存分に解説もしていただいた。それにしても、スローフードのNPO運動は、町づくり、小学校の教育、大学運営、厳選された食材の市場形成まで、徹底して行われそのコンセプトと実践力は改めて圧倒された。

今回は、スローフードだけではなく、そこにかかわる市役所や、ワイナリーや市場まで、食を通して、町全体の仕組みまでの流れが、わかるもので、充実したものだった。

コーディネートをしてくださった中野美季さんも「これだけの訪問とインタビューは、今度またといわれても、そうそうに実現できるものじゃないですよ」とのこと。岡崎さんに「ここまで、コーディネートをしてもらえたのはなぜ?」と尋ねたら、「本物を知ってもらいたいからです」と明快なお答え。いや嬉しかったし楽しかった。妻の早苗も喜んでいて「絶対毎年行こう!!」と、もう来年の旅行プランに取り掛かっている。


金丸弘美(食環境ジャーナリスト・食総合プロデューサー)
◎総務省 地域力創造アドバイザー
http://www.soumu.go.jp/ganbaru/jinzai/pdf/b022.pdf
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