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スローライフ旅日記
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  旅日記 no.227
「チッタ・スロー(ゆったりした市)」
2009年1月21日
「チッタ・スロー(ゆったりした市)」こんにちわ。金丸です。
今日は「チッタ・スロー(ゆったりした市)」の話です。

イタリア・ピエモンテ州ブラ市にあるスローフード協会国際本部行ってきたことは、前にも書いた。今回のイタリアに行った目的は、食と農と町づくりの連携を改めて知るためだ。

スローフード食の大学、NPOワインバンク、ブラ市役所、トリノ市役所、学校給食、スクールガーデン、スローフードがコンサルタントをした食品マーケット「イータリー」を始め、ツーリズムと連携したバローロのエノティカやオステリアなども取材をした。

こまかいところまで行けたのは、コーディネートしてくれたスローフード大学を出た中野美季さん、岡崎啓子さんのおかげだ。今回の旅で、もっとも関心のあったのは、町づくりだ。

そこでブラ市の役場の訪問を行った。役場が驚いたことに、外見はぼろぼろのような古いレンガ造り。役場の人に尋ねたら、なんと1400年から使っているのだそうだ。さらに驚いたのは、トリノに行ったらトリノの役場は、古い重厚な建築で、こちらは1600年代から使っているというのである。

ところで、ブラ市では、1998年、スローフード協会会長のカルロ・ペトリーニ氏と市長が提案した「チッタ・スロー(ゆっくりした市)」という町づくりが進められていた。この政策は、グレーヴェ・イン・キャンティ、オルヴァイエート、オジターノの市長が、スローフード協会のイベント「サローネ・デル・グスト」で出会ったことから始まったという。

僕らが、2003年にイタリアに行ったときには、26市が賛同しているということだったのだが、その、中身がよく理解できなかった。その後、日本各地を訪れて、町づくりのひどさに、がっくりしていたところで、ヨーロッパには、景観を重視する政策があるとわかって、今回は、その点を含めて「チッタ・スロー」の意味が知りたかったのである。

なんと、いまではイタリア全土50市に広がっているという。その取り組みの内容を尋ねたら、商店街に車を入れない、遺伝子組み換え作物を持ち込まない、小さな農家の市場を毎日開く、学校給食は地域のものを使う、景観保護から町にそぐわない色や建築物を建てないなどが、実際に行われていたのである。

「まずは、伝統を再評価すること。とくに食と農業の分野においてということから始まった。ただ、4つの市は北と南にあり条件が違う。食と文化ということで何ができるかと考えた。そこからよりよく生きることができるという「ボンビーベレ(よりよく生きやすい町)」という概念から「チッタ・スロー」というテーマが生まれたです」と役場の方。

「住んでいる人にとって快適なことは、また訪れる人にとっても快適だということです。方向性としては、伝統の再評価、環境の配慮です。町の発展が負荷をかけない、サスティナブル(持続的)なものであることなどです。イタリアでは欠けやすいのは、行政サービスですね。これを強化すること。公共交通機関の整備、ゴミのきちんとした回収です」

「インダストリー(産業)と自然の調和。地域地域にある伝統を再評価するということなどです。それが地域の強みになっていくのでしょう。例えば、伝統的農業の評価をいうことであればGMO(遺伝子組み換え)は排除するということとなります」とのことだった。

実際、その後に学校給食や街並を見学したのだが、商店街は車が入れず歩けるようになっているし、見苦しい看板や自動販売機などは一切ない。いや、スローフードは町づくりにまで政策をなげかけ、それを形にしている。いやすごいNPOだなと、改めて知ったイタリア行きだった。

■スローフードの活動を「月刊JA」1月号より3ヶ月にわたって連載します。

『月刊JA』(発行:JA全中)
「金丸弘美の食と農が地域をつくる」↓
http://www.zenchu-ja.or.jp/public/index.html
(記事はホームページからPDFファィルで読むことができます。
毎月16日にアップ。金丸弘美のホームページに毎月転載します
http://www.banraisya.co.jp/kanamaru/home/index.php

 なおスローフードの組織と運営と事業内容については
『スローフード・マニフェスト』(木楽舎)で詳細に紹介をして
います。この本は、スローフード協会のカタツムリマークの入っ
た本部から認められた日本で初めての本です。↓
 ぜひ読んでいただけると幸いです。
http://www.banraisya.co.jp/kanamaru/book/bookdetail.php?no=127


金丸弘美(食環境ジャーナリスト・食総合プロデューサー)
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