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  旅日記 no.263
「和三盆を訪ねる」
2009年10月3日
「和三盆を訪ねる」こんにちわ。金丸です。
今日は「和三盆を訪ねる」の話です。

高知市に行くことになって、どうしても行きたかったのが、三谷製糖羽根さぬき本舗だ。ここは、上品な砂糖「和三盆」を作っている。品位のある美しさ。口に入れるとさらりととけるような気品のある甘さなのである。木枠で型押しした和三盆も美しい。季節の彩りのある小さな三谷製糖 和三盆である。
http://www.wasanbon.com/(三谷製糖)

連絡を入れたら、なんと高知空港までご主人の奥様三谷幸子さんが迎えてくださった。きけば徳島空港からのほうが近いとのことだった。約一時間あまり、瀬戸内海に面したところに三谷製糖の工房があった。「お待ちしていました。遠くからありがとうございます」と歓迎してくださったのは、お母様の三谷あい子さんである。

三谷製糖は文化元年(1804年)の創業だというが、家屋も、昔ながらの平屋の木造建築。建て増して、すでに現在の建物も100年以上はたつそうで、重要文化財になっている。なかに入ると、落ち着いた雰囲気。お茶と和三盆をいただく。三谷あい子さんにお目にかかり、昔ながらのたたずまいに居るというだけで、もう嬉しくなってしまった。

和三盆のベースとなるのは、サトウキビから搾って煮詰めた白下糖と呼ばれるもの。白下糖といってもこげ茶色のもの。昔の釜をみせてもらい工程をおしえてもらったら基本的には、釜で炊いて、煮詰めて、それを素材に使う。ここまでは奄美や沖縄の黒糖づくりとほぼ同じだ。だが、さらにきめ細かで、あくをとって、その上澄みを固める。かなり上質なものとなる。もちろんこれでも十分に食べられるのだが、そこからとぎと呼ばれる、作業がある。

お隣の木造の重厚な木の扉をあけると、あっと驚いた。職人さんが台で、大きな塊の白下糖を、ちょうどパン生地や蕎麦の生地を練るようにたんねにこねている。それを木綿の袋に入れて、「押し船」と呼ばれる圧搾する木箱のようなところに入れて、それを石の重さで押して蜜を出す。

ちょうど、古式の醤油や日本酒の作業と似ている。圧搾して取り出して、さらに練り込み、この過程が、「つぶり−−荒研ぎ−−どぶ研ぎ−−中研ぎ−−あげ研ぎ」と呼ばれるそうで、これに一週間を費やすという。そして自然乾燥をして木の型に入れて、四季を彩った愛らしい和三盆が誕生する。


江戸の手法をそのままに残していることに感銘。口のなかでふわりと溶けるようなやさしいあまい感触は、和三盆ならではのもの。そこにはとほうもない職人の技があってのものと改めて知る。このあと、サトウキビの畠も見せてもらった。近郊の農家に依頼して栽培をしてもらっているとのことだが、その数は40戸ほどあるそうだ。

現場に行って、あっと驚いた。それぞれの田んぼの一角にあり、それこそほんの小さな畠である。しかも、すべて添え木がしてあり、丁寧に植えてある。奄美諸島や沖縄とはまったく栽培法が違う。サトウキビの品種も異なるようで、こちらのは細い。除草剤をつかわず、自然堆肥で育てているという。素材からの取り組みからものづくりがされていて、ふたたび畑でも感激だった。