書評
    47都道府県 地野菜 伝統野菜百科    (日本農業新聞 2009年12月28日掲載)

「47都道府県 地野菜 伝統野菜百科」成瀬宇平、堀知佐子・著(丸善)

 私は食育や食のブランドづくりのワークショップを年間20本ほど手がけている。その時に、必ず行政やJAの担当者に食材のテキストの作成をお願いしている。
 秋田県横手市では「山内(さんない)ニンジン」とサトイモの「芋の子」。この歴史的背景、栽培法、味、料理法などをまとめて公開講座を開く。そうすると地域の特徴が食文化から明確となる。
「山内ニンジン」は、やや大型のニンジン。1945年から65年ごろまで盛んに作られたものの、しばらく途絶え、最近復活した。
「芋の子」は。水田の転作作物として奨励され、地域ブランドとして販売されるようになった。
 本書は、ニンジンだけでも大阪の赤みの強い「金時ニンジン」、沖縄の黄色い「島ニンジン」など18件を収録する。サトイモは、埼玉、東京、石川など19件を記載する。あらためて見ると、日常に使う野菜の多彩さに驚かされる。「博多金時ニンジン」、「愛媛早生イモ」、「伊勢イモ」などのように地名の付いた野菜は350もある。地域固有の野菜類が1000以上も収められる。
 料理から郷土料理までを紹介し、俯瞰すると、「地域の多様性こそが豊かさなのだ」ということをあらためて知る。
 食育基本法には「伝統的な食文化の継承」をうたっている。最近は、学校教育の場でも伝統野菜が使われるところが出てきた。地域の素材が子供たち伝えられてこそ、真の食育ということができるのだろう。