集まったパン屋さんのなかには、すでに口コミによる予約で売り切れというところもあるそうだ。そうしてアンパンと同時に、材料として使われることとなった徳之島のサンゴ礁の塩、黒糖もパン屋さんで販売される。これには感無量だった。
というのも僕の家族が健康を考え自然豊かな奄美諸島の徳之島に移ったのは3年前。そこで作られる昔ながらの黒糖や塩を見つけた。しかしほそぼそと作られていた。これがもっと評価されて、少しでも売れることで地域が元気になれればと思っていた時に、10年来の付き合いになる櫛澤電機の澤畠光弘さんが、仲のいいパン屋さん「パイニイ」の松野恭也さん、同じく「横浜本牧館」の青木茂さん、印刷業のビードの吉原均さんの3人を伴って徳之島に来てくださった。旅の目的は、素材探しである。そうして持ちかけられたのが「幕末アンパンプロジェクト」との連携だったのだ。
こうして澤畠さんは、パン屋さんに呼びかけ、プロジェクトが立ち上がった。協賛金は5万円。これを宣伝、チラシ、POP、講習費用にあてて、本格的な村と町と食と地域を繋ぐ元気な人のネットワークが誕生したのだ。
そもそもの始まりは10年前にさかのぼる。パン作りにこだわった職人、猪原義英さん(故人)が、山梨県の八ツ岳で石釜の体験工房を作った。そうして農家と連携して小麦から作るパン作りを始めたのである。親交のあった澤畠さんや、松野さん、青木さんたちが、たびたび山梨にパン好きの人たちと訪れ、パン焼きを体験したのである。こうして地元の農家の人たちと交流が生まれた。
それとは別に、横浜の「社会福祉法人開く会共働舎」のパン焼きやお菓子の支援をしてきた澤畠さんたちは、その実績が買われて山梨県北斗市の「社会福祉法人緑の風」を応援することとなった。緑の風では麦から作るパン作りが始まった。そうして、幕末アンパンのプロジェクトで広げることとなった。ところが「緑の風」だけの小麦だけでは足りない。そこで周辺の農家に声をかけたというわけである。
このプロジェクトの素晴らしいのは、小麦の価格、塩、黒糖を地域の人たちが存続できるようにと、農家が永続してできる価格を設定していることである。たとえば小麦は製粉にして25kg1万2000円。これは相場の3、800円のおよそ3倍強。手作りの国産で栽培から加工まで計算した本来の値段なのである。地域の食材をきちんと守り、生産者に正当な報酬を考える。なおかつ、歴史的背景、生産工程まで調べて、食品をきちんと売り出す。これこそ、イタリアで行われているスローフード運動の言うところのガストロノミー(食文化)だろう。スローフードという名前はひとこともついてないけれど、本当の意味でのスローフードが一つ形になった。
●問いあわせ先:櫛澤電機製作所
〒221-0014 横浜市神奈川区入江1-32-6
電話 045-431-1178 fax045-431-1121
●幕末あんぱんプロジェクト 参加者
(1)ローゼンボア 高崎 健人
221-0812横浜市神奈川区平川町10-2
電話045-491-8856 FAX045-491-7416
(2)パン工房 椎の実 四野見 昇
230-0070横浜市鶴見区馬場1-27-16
電話045-575-4103 FAX045-575-4103
(3)日本堂 小山 浩一
221-0002横浜市神奈川区大口通り127-3
電話045-421-4708
(4)パネテリア ピグロ 足立 総次郎
221-0801横浜市神奈川区神大寺4-1-7
電話045-413-1412 FAX045-413-1412
(5)エスプラン 塩田 一善
230-0051横浜市鶴見区鶴見中央4-1-7
電話045-501-2147 FAX045-501-8665
(6)社会福祉法人 開く会 共働舎 萩原 達也
245-0015横浜市泉区中田西1丁目11-2
電話045-802-9955 FAX045-804-4122
(7)社会福祉法人 緑の風 栗原 えつこ
408-0032山梨県北杜市長坂町大井ケ森994-1
電話0551-20-4400 FAX0551-20-4426
(8)ベーカリー クッペ 池田 和彦
240-0033横浜市保土ヶ谷区境木本町1-35
電話045-721-2388 FAX045-721-2388
(9)パンステージ プロローグ 山本 敬三
225-0001横浜市青葉区美しが丘西1-3-10
電話045-902-7879 FAX045-902-7879
(10)パン・ド・ナノッシュ 関谷 勝美
253-0056茅ヶ崎市共恵1-7-1
電話0467-86-8757 FAX0467-86-8757
(11)ミルポンド 飯島 清
270-0112千葉県流山市青田1408
電話04-7154-1414 FAX04-7154-1414
(12)フォルトゥーナ 前田 崇
154-0017東京都世田谷区世田谷1-10-19
電話03-3706-1977 FAX03-3706-1977
(13)本牧館 青木 幸太郎
231-0825横浜市中区本牧間門19-28
電話045-622-6136 FAX045-624-3566
(14)パイニイ 松野 恭也
251-0032藤沢市片瀬2-2-2
電話0466-27-2231 FAX0466-27-7372
(15)富夢富夢 関口 義哉
131-0033東京都墨田区東向島5-3-7
電話03-3610-1651 FAX03-3614-3336
(16)ブレーメン 長嶌 大輔
236-0012横浜市金沢区柴町345-86
電話045-788-0520 FAX045-786-9111
(17)ミニヨン
211-0063川崎市中原区小杉町3-269
電話044-733-0059 FAX044-733-0112
(18)櫛澤電機製作所
〒221-0014 横浜市神奈川区入江1-32-6
電話 045-431-1178 fax045-431-1121
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今週からほぼ毎木曜更新で、全国の食の生産現場を取材して回る金丸弘美さんの連載を始めます。タイトルの「ゆらちもうれ」は、現在金丸さんの家族が暮らす奄美・徳之島の言葉で「ゆっくりしていきなさい」という意味です。ちょっと一休みして、食の現場からの直送レポートを楽しんでいただけたらと思います。(編集部)