第33回 「給食まつり」を見に行く 佐賀
全国の学校給食を食べに行くことを毎月行っている。これまで沖縄から秋田まで、幼稚園、小学校、中学校などに足を運んだ。というのも、今、子どもたちの食の環境は、簡易なファストフードのまん延や、偏った食生活が広がったため、栄養バランスが崩れ、アトピーや肥満をはじめ、生活習慣病が広がっている。そんななかで、子どもたちにきちんとした食を伝える役割を、給食は大きく担っている。そんな給食の現場の活動を見てみたいと、あちこちを訪ねているのだ。
国が食育を進めていることもあって、子どもたちに豊かな食を伝える給食への取り組みは熱心に行われている。そんななか、佐賀県で行われた「給食まつり」に出掛けた。主催は佐賀県教育委員会、佐賀県学校栄養士会である。佐賀での給食の取り組みを、給食の展示や試食会、シンポジウムなどを通して、一般の人たちに知ってもらおうと開催されたものだ。
会場となった佐賀市のアバンセでは、1階に給食の実物や食器類などが、展示してあった。磁器の利用も、学校によってデザインが変わっていたり、ディスプレイが工夫されたりと、様子がわかって楽しい。さらに実際に、県産の農産物を使った給食、バイキング給食、またアレルギー対応の代替食材を使った料理なども展示された。さらに、栄養士さんが作った、貝柱、椎茸、ぎんなんなどを入れた「秋の香りごはん」、「ちらし寿司」などの試食会も行われ、とても分かりやすいものだった。
食器は僕らのころはすべてアルマイトで、先割れスプーンというなさけないものだった。ミルクは脱脂粉乳だったし、パンもぱさぱさで、給食に関しては、一つもいい思い出がない。ところが、今は大きな様変わりをしている。有田、伊万里という焼き物でも有名な佐賀県では、県内の学校での磁器の利用率は60%にもなるという。それも学校によってデザインが違うものが使われていたりする。クリスマスには、可愛らしい飾りのディスプレイがされていたりと、とてもいい。それらの食器類が飾ってある。
佐賀県の給食では、県内の食材を使うことを推進している。その利用率は40%にもなるという。学校給食会でも、佐賀県産の米、小麦を利用したパンや揚げチャメン、佐賀県産の海苔、大豆缶、冷凍みかん、干し椎茸などの加工品の利用が増えているのだそうだ。その他の野菜、生鮮品は、各学校で地域のものが積極的に使われている。それらの事例も展示されていた。
なかでも注目をひいたのは、今年、初めて行われた、子どもたちが参加して料理を作るという「わたしが考える未来の給食コンクール」である。各学校に呼びかけて、小学校から10チームが参加、実際に料理を作った。メニューはそれぞれ考えたものだという。食材は、できるだけ地域のものを使うというのが条件である。
参加したのは、佐賀県の小学6年生の10チーム。小学校の5、6年生は、調理実習があるので、児童が料理をできる。そこで、自ら考えた料理を、実際に作ってもらおうというものだ。食育ということを話したりするよりも、実際に、子どもたちに作ってもらったほうがいいのではないかということで、開催されたものだという。
ホールに設けられている調理室で、コンクールが行われた。学校の仲良しチームを中心としたメンバー。みんなでメニューは考えたのだという。先生に相談したところ、料理ガイドを参考にしたところ、いろいろだ。食材も子どもたちが、自分で買ったところもある。それぞれに栄養士さんが付いて調理を行った。
調理の様子を見ていると、みんな上手である。それにチームワークがとてもいい。楽しそうにしている。聞いてみると、ぶっつけ本番というチーム、予行演習をしてきたチームと、いろいろ。それでも、どの子どもたちも手際がいい。この料理のプロセスから審査の対象となり、それぞれの持ち味を評価しての賞状が渡された。審査員長になった佐賀大学文化教育学部の水沼俊美教授の好評は、それぞれの個性をよくみたものとなった。
その一部を紹介すると。
「やる気まんまん。日頃からやっているのがわかる。串かつをビニールに入れてパン粉をぱっぱっとつけるところは素晴らしかった」(佐賀市・鍋島小学校 味噌串かつ、きのこスープ、スイートポテト)
「男性は非常にうまい。玉葱のみじん切りも上手だった。野菜が献立にたくさん使われている」(佐賀市・神野小学校 ロールキャベツ、ニンジンとセロリのキンピラ、もやしの中華スープ)
「なす、くちぞこ(シタビラメ)、イチゴなど、地域のものを結集していた。地域の力を感じた」(東与賀町・東与賀小学校 手作りジャム、くちぞこのからあげうどん、なすのグラタン)といった具合。
いずれにしても、どこにいっても、子どもたちが自ら料理を作る場面は、いつも活き活きと見える。素敵な試みだったと思う。(ライター、金丸弘美)
2005年11月24日
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